医療・健康

オランダの医療制度完全ガイド

家庭医制度って何?健康保険の選び方は?オランダの医療システムを日本と比較しながら詳しく解説

2025年1月16日 | 読了時間:約12分

オランダに移住する際、最も気になることの一つが医療システムです。日本とは大きく異なる「家庭医(huisarts)」制度や、複雑に見える健康保険制度など、戸惑うことも多いでしょう。本記事では、20年以上オランダで生活している経験から、日本人が知っておくべき医療制度の仕組みを分かりやすく解説します。

1. オランダの医療システムの特徴

オランダの医療システムは、効率性と普遍的なアクセスを重視した制度です。すべての居住者に健康保険加入が義務付けられており、基本的な医療サービスは誰もが受けられるようになっています。

主な特徴

  • 家庭医制度:すべての医療は家庭医(huisarts)から始まる
  • 健康保険義務化:18歳以上の全居住者に加入義務
  • 自己負担金制度:年間€385(2025年)の自己負担金あり
  • 予防医療重視:早期発見・早期治療を重視

2. 健康保険(Zorgverzekering)の仕組み

重要:

オランダに居住開始後、4ヶ月以内に健康保険に加入する必要があります。遅れると罰金が課されます。

基本保険(Basisverzekering)

すべての保険会社が同じ内容を提供する義務があり、以下の医療サービスがカバーされます:

カバーされる項目

  • • 家庭医の診察
  • • 専門医の治療(紹介状必要)
  • • 病院での治療・手術
  • • 処方薬(一部)
  • • 妊娠・出産関連
  • • 18歳未満の歯科治療

カバーされない項目

  • • 成人の歯科治療
  • • 眼鏡・コンタクトレンズ
  • • 美容整形
  • • 代替医療(一部)
  • • 心理カウンセリング(一部)

追加保険(Aanvullende verzekering)

基本保険でカバーされない項目を補う任意保険です。必要に応じて選択できます。

人気の追加保険オプション

  • • 歯科保険(成人向け)
  • • 理学療法の追加回数
  • • 眼鏡・コンタクトレンズ補助
  • • 代替医療(鍼灸、ホメオパシーなど)
  • • 海外旅行保険

3. 家庭医(Huisarts)制度の理解

オランダの医療システムの中核となるのが家庭医制度です。日本のように直接専門医を受診することはできません。

家庭医の役割

  • 1.
    最初の窓口:すべての健康問題の相談先
  • 2.
    継続的なケア:患者の健康履歴を管理
  • 3.
    専門医への紹介:必要に応じて紹介状を発行
  • 4.
    予防医療:定期健診や予防接種の管理

家庭医の登録方法

  1. 1
    近所の家庭医を探す:

    住所の郵便番号を基に、近くの家庭医を検索(www.zorgkaartnederland.nl)

  2. 2
    新規患者受付確認:

    多くの家庭医は患者数に上限があるため、受付可能か確認

  3. 3
    登録手続き:

    BSN番号、身分証明書、健康保険証を持参して登録

4. 緊急時の対応方法

緊急連絡先

  • 生命に関わる緊急事態: 112
  • 家庭医の時間外診療: Huisartsenpost(各地域で番号が異なる)

緊急度の判断基準

緊急(112)

  • • 意識がない
  • • 呼吸困難
  • • 激しい胸痛
  • • 大量出血
  • • 重度の火傷

準緊急(Huisartsenpost)

  • • 高熱(39度以上)
  • • 激しい痛み
  • • 深い切り傷
  • • 急な体調悪化

通常(家庭医)

  • • 軽い風邪症状
  • • 慢性的な痛み
  • • 定期健診
  • • 薬の処方

5. 専門医への受診方法

オランダでは専門医を受診するには、必ず家庭医からの紹介状(verwijsbrief)が必要です。これは日本との大きな違いの一つです。

専門医受診の流れ

1

家庭医に症状を相談し、専門医の必要性を判断してもらう

2

紹介状を受け取り、指定された専門医に予約を入れる

3

専門医での診察・治療を受ける

4

治療結果は家庭医にも報告される

待ち時間について:

専門医の予約は数週間から数ヶ月待つことがあります。緊急性が高い場合は、家庭医が優先的な予約を手配してくれることもあります。

6. 薬局(Apotheek)の利用方法

オランダの薬局システムも日本とは異なります。処方箋薬と市販薬の区別が明確で、多くの薬は医師の処方箋が必要です。

処方箋薬(Receptplichtige medicijnen)

  • • 抗生物質
  • • 痛み止め(強いもの)
  • • 血圧薬
  • • ホルモン剤
  • • 抗うつ薬

市販薬(Zelfzorgmedicijnen)

  • • パラセタモール(解熱鎮痛剤)
  • • イブプロフェン(低用量)
  • • 風邪薬
  • • 胃腸薬
  • • ビタミン剤

薬局での手続き

  1. 1. 医師から処方箋を受け取る(電子送信の場合が多い)
  2. 2. 薬局で健康保険証とIDを提示
  3. 3. 薬剤師から薬の説明を受ける
  4. 4. 自己負担金がある場合は支払い

7. 歯科治療について

重要:

18歳以上の歯科治療は基本保険ではカバーされません。追加保険に加入するか、全額自己負担となります。

歯科治療の費用目安

治療内容 費用(目安)
定期検診 €25-40
クリーニング €60-80
虫歯治療(詰め物) €80-150
根管治療 €400-800
クラウン €800-1200

歯科追加保険に加入すると、年間€500-1500程度まで補償されることが多いです。定期的な歯科治療が必要な方は、追加保険の加入を検討しましょう。

8. 日本との医療システム比較

主な違い

医療へのアクセス

日本

専門医に直接アクセス可能、待ち時間が短い

オランダ

家庭医経由が必須、専門医は待ち時間が長い

薬の入手

日本

多くの薬が薬局で購入可能

オランダ

ほとんどの薬に処方箋が必要

医療費

日本

受診時に3割負担、月額上限あり

オランダ

年間自己負担金制度、それ以降は無料

オランダ医療システム活用のコツ

良い家庭医を見つける:

信頼できる家庭医との関係構築が最も重要。英語対応可能な医師を探しましょう。

予防医療を活用:

定期健診や予防接種は積極的に受けましょう。多くは保険でカバーされます。

薬は日本から持参も検討:

常備薬は日本から持参すると便利。ただし、3ヶ月分までが目安です。

緊急連絡先をメモ:

112番と地域のHuisartsenpostの番号は必ず控えておきましょう。

まとめ

オランダの医療システムは日本とは大きく異なりますが、慣れれば効率的で質の高い医療を受けることができます。特に家庭医制度は最初は戸惑うかもしれませんが、継続的なケアを受けられる良いシステムです。

健康保険への早期加入、信頼できる家庭医の確保、そして緊急時の対応方法を理解しておくことが、オランダで安心して生活するための鍵となります。不明な点があれば、遠慮なく医療従事者に質問しましょう。多くの医療従事者は英語を話せるので、コミュニケーションに困ることは少ないはずです。

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