起業・ビジネス

オランダでの起業・個人事業開始ガイド

個人事業主ビザを活かして起業したい方必見!会社設立から税務申告まで、成功するビジネススタートのコツ

2025年1月17日 | 読了時間:約15分

オランダは起業家精神を重視する国として知られ、特に日本人には個人事業主ビザ(Dutch-American Friendship Treaty)という有利な制度があります。本記事では、オランダで実際に起業し、20年以上ビジネスを運営してきた経験から、起業準備から事業運営まで実践的なアドバイスをお届けします。

1. オランダの事業形態と選び方

オランダで起業する際、まず決めるべきは事業形態です。日本人起業家の多くは個人事業主(Eenmanszaak)から始めますが、事業規模や責任範囲に応じて適切な形態を選ぶことが重要です。

個人事業主(Eenmanszaak)

メリット

  • • 設立が簡単で費用が安い
  • • 意思決定が迅速
  • • 税制優遇措置あり
  • • 管理負担が少ない

デメリット

  • • 個人資産も責任対象
  • • 信用力が限定的
  • • 事業譲渡が困難
  • • 共同経営不可

適している人:フリーランサー、コンサルタント、小規模サービス業

有限会社(BV)

メリット

  • • 有限責任
  • • 高い信用力
  • • 投資家からの資金調達可能
  • • 事業譲渡・売却が容易

デメリット

  • • 設立費用が高い(€500-1000)
  • • 管理負担が大きい
  • • 年次報告義務
  • • 配当税がかかる

適している人:成長志向の事業、複数人での共同経営、リスクの高い事業

個人事業主ビザ(DAFT)利用者への注意:

DAFTビザで滞在している場合、最初の2年間は個人事業主として活動する必要があります。BVへの変更は可能ですが、ビザ更新時に説明が必要です。

2. 商工会議所(KvK)への登録手続き

オランダで事業を始めるには、商工会議所(Kamer van Koophandel)への登録が必須です。この登録により、KvK番号を取得し、正式に事業を開始できます。

登録手続きの流れ

1

オンライン予約

KvKウェブサイトで最寄りのオフィスに予約を入れる

2

必要書類の準備

  • • パスポート
  • • 居住許可証(verblijfsvergunning)
  • • 事業計画書(簡単なもので可)
  • • 住所証明(賃貸契約書など)
3

面談・登録

担当者と面談し、事業内容を説明(英語対応可)

4

登録費用支払い

€75(2025年現在)をその場で支払い

5

KvK番号取得

その場でKvK番号と登録証明書を受け取る

登録時に決めること

  • 事業名(Handelsnaam):個人名でも屋号でも可
  • 事業内容(SBI-code):主な活動内容を選択
  • 事業所住所:自宅でも可(賃貸契約を確認)
  • 開業日:実際の活動開始日

3. ビジネス銀行口座の開設

KvK登録後は、ビジネス専用の銀行口座を開設します。個人口座との分離は、会計管理と税務申告のために重要です。

主要銀行の比較

銀行 月額費用 英語対応 特徴
ING €7-15 大手、サポート充実
ABN AMRO €8-20 ビジネスツール豊富
Rabobank €6-15 地域密着型
bunq €3-18 オンライン専業、柔軟

口座開設に必要なもの

必須書類

  • • KvK登録証明書
  • • パスポート
  • • 居住許可証
  • • BSN番号

追加で求められる場合

  • • 事業計画書
  • • 収入見込み証明
  • • 既存の取引先情報
  • • 個人の銀行取引履歴

4. 税務登録と納税義務

重要:

オランダの税務は複雑です。初年度は税理士(belastingadviseur)の利用を強く推奨します。費用は年間€500-1500程度ですが、節税効果と安心感を考えると投資価値があります。

主な税金の種類

付加価値税(BTW)

標準税率:21%

軽減税率:9%(食品、書籍など)

ゼロ税率:0%(輸出など)

小規模事業者制度(KOR)

年間売上€20,000以下の場合、BTW免除申請可能

所得税(Inkomstenbelasting)

年収 税率(2025年)
€0 - €75,518 36.97%
€75,518以上 49.50%

※個人事業主は各種控除により実効税率は低くなります

個人事業主の税制優遇

  • 起業家控除(Ondernemersaftrek):

    年間€5,540の控除(週16時間以上事業に従事する場合)

  • スタートアップ控除(Startersaftrek):

    開業から3年間、追加で€2,123の控除

  • 中小企業利益免除(MKB-winstvrijstelling):

    利益の13.31%が非課税

5. 会計・記帳の基本

適切な記帳は税務申告の基礎であり、事業の健全性を把握するためにも重要です。オランダでは、すべての事業者に記帳義務があります。

記帳の基本要件

保存すべき書類

  • • すべての請求書(発行・受領)
  • • 銀行取引明細
  • • 契約書
  • • レシート・領収書
  • • 給与明細(従業員がいる場合)

保存期間

  • • 一般的な書類:7年間
  • • 不動産関連:10年間
  • • デジタル保存も可能
  • • 税務調査に備えて整理

おすすめの会計ソフト

Exact Online

オランダ最大手、機能充実

料金:€15-50/月

特徴:税理士連携◎

Moneybird

使いやすさ重視

料金:€12-24/月

特徴:初心者向け

InformerOnline

コスパ重視

料金:€10-20/月

特徴:基本機能充実

6. 必要な保険と社会保障

個人事業主は会社員と異なり、多くの保険に自分で加入する必要があります。リスク管理の観点から、適切な保険選びは重要です。

必須の保険

  • 健康保険(Zorgverzekering):

    全居住者に加入義務。月額€130-200程度

  • 賠償責任保険(AVP):

    個人の賠償責任をカバー。月額€5-10程度

強く推奨される保険

  • 職業賠償責任保険(Beroepsaansprakelijkheid):

    業務上のミスによる損害をカバー。年額€300-1000

  • 就労不能保険(AOV):

    病気・けがで働けない場合の収入保障。月額€50-200

  • 法的支援保険(Rechtsbijstand):

    契約トラブル等の法的費用をカバー。月額€20-40

年金について:

個人事業主は国民年金(AOW)のみで、企業年金はありません。老後資金は自分で準備する必要があります。年金積立商品(pensioensparen)の利用を検討しましょう。

7. 日本人に適したビジネスアイデア

オランダで成功している日本人起業家の事例を基に、日本人の強みを活かせるビジネスアイデアをご紹介します。

日本文化・言語関連

  • • 日本語教室・オンラインレッスン
  • • 日本文化ワークショップ(茶道、書道、折り紙)
  • • 日本食レストラン・ケータリング
  • • 日本製品の輸入販売
  • • 和食料理教室

専門スキル活用

  • • IT・ウェブ開発
  • • グラフィックデザイン
  • • 翻訳・通訳サービス
  • • コンサルティング
  • • オンラインマーケティング

日蘭ビジネス橋渡し

  • • 貿易・輸出入サポート
  • • ビジネスコーディネート
  • • 市場調査・進出支援
  • • 観光ガイド・ツアー企画
  • • 不動産仲介(日本人向け)

オンラインビジネス

  • • Eコマース(日本商品販売)
  • • コンテンツ制作(YouTube、ブログ)
  • • オンラインコーチング
  • • デジタルマーケティング代行
  • • SaaS・アプリ開発

成功事例から学ぶポイント

  • ✓ 日本人としての強み(品質、サービス、信頼性)を前面に
  • ✓ 現地のニーズをしっかりリサーチ
  • ✓ オランダ人の価値観(効率性、直接性)を理解
  • ✓ 最初は小さく始めて、徐々に拡大
  • ✓ ネットワーキングを積極的に

8. 成功のための実践的アドバイス

1. ネットワーキングの重要性

オランダでは人脈が非常に重要です。以下の方法で積極的にネットワークを広げましょう:

  • • 商工会議所のイベントに参加
  • • 業界団体や起業家コミュニティに加入
  • • LinkedInを活用した繋がり作り
  • • 日本人コミュニティとの交流
  • • コワーキングスペースの利用

2. オランダのビジネス文化への適応

重視される価値観

  • • 時間厳守
  • • 直接的なコミュニケーション
  • • 効率性
  • • ワークライフバランス
  • • 平等性

避けるべきこと

  • • 曖昧な表現
  • • 階層的な態度
  • • 長時間労働の強要
  • • 過度な謙遜
  • • 約束の反故

3. 財務管理のコツ

  • キャッシュフロー重視:

    最低3-6ヶ月分の運転資金を確保

  • 税金の積立:

    収入の30-40%を税金用に別口座で管理

  • 定期的な財務チェック:

    月次で収支を確認し、問題を早期発見

4. 言語の壁を乗り越える

英語で十分ビジネスは可能ですが、オランダ語ができると信頼関係構築に有利です:

  • • 基本的な挨拶と自己紹介はオランダ語で
  • • 重要な契約書は必ず英訳を依頼
  • • ビジネス用語の基礎は押さえる
  • • 言語交換パートナーを見つける

よくある失敗と対策

過小な初期投資:

→ 最低でも1年分の生活費+事業資金を準備

税務の軽視:

→ 初年度から税理士を活用し、適切な申告を

市場調査不足:

→ 最低3ヶ月は現地でリサーチしてから起業

価格設定ミス:

→ オランダの物価水準に合わせた適正価格を

まとめ

オランダでの起業は、適切な準備と現地文化への理解があれば、日本人にとって大きなチャンスとなります。個人事業主ビザ(DAFT)という有利な制度を活用し、日本人としての強みを活かしたビジネスを展開できます。

重要なのは、オランダのビジネス文化を理解し、現地のニーズに合わせたサービスを提供することです。また、税務や法務などの専門的な部分は、初期段階から専門家のサポートを受けることをお勧めします。

起業は決して簡単な道のりではありませんが、オランダの開かれたビジネス環境と、日本人起業家を支援する制度を活用すれば、成功への道は開けています。一歩ずつ着実に進んでいきましょう。

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