日本での長時間労働に疲れて、オランダでの新しい働き方に憧れる方も多いのではないでしょうか。オランダは世界でも有数のワークライフバランスが取れた国として知られています。実際にオランダで20年以上働いてきた経験から、両国の職場文化の違いを詳しく解説します。
労働時間と残業文化
日本の労働時間
- • 法定労働時間:週40時間
- • 実際の平均労働時間:週45-50時間
- • 残業が当たり前の文化
- • 「お疲れ様」の挨拶文化
- • 有給取得率:約50%
- • 長時間労働 = 真面目という認識
オランダの労働時間
- • 法定労働時間:週40時間
- • 実際の平均労働時間:週29時間
- • パートタイム勤務が一般的(75%)
- • 17:00には多くの人が帰宅
- • 有給取得率:ほぼ100%
- • 効率性重視の働き方
残業に対する考え方の違い
日本では「残業=頑張っている証拠」と捉えられがちですが、オランダでは「残業=効率が悪い」と見なされます。 定時に帰ることが当たり前で、むしろ遅くまで残っていると「時間管理ができていない」と評価されることもあります。
有給休暇と休暇文化
日本:有給取得への遠慮
- • 年間20日(勤続年数により増加)
- • 実際の取得率は約50%
- • 「周りに迷惑をかける」という意識
- • 病気の時しか休まない人も多い
- • お盆・正月・GWに集中
オランダ:休暇は権利
- • 年間最低25日(フルタイム)
- • 実際の取得率はほぼ100%
- • 夏に3週間連続休暇が一般的
- • 休暇を取らないと上司に注意される
- • 年間を通じて分散して取得
夏季休暇の文化
オランダでは7-8月に「Grote Vakantie(大きな休暇)」という概念があり、多くの人が2-3週間の連続休暇を取ります。 この期間中、一部の店舗や会社が休業することもあります。家族と過ごす時間や、リフレッシュが最優先とされています。
上下関係と職場の階層構造
日本:縦社会
- • 明確な上下関係
- • 敬語の使い分け
- • 年功序列の要素が残る
- • 上司への報告・連絡・相談が重要
- • 飲み会での関係構築
- • 先輩・後輩の概念
オランダ:フラット組織
- • フラットな組織構造
- • ファーストネームで呼び合う
- • 能力主義
- • 誰でも意見を言える雰囲気
- • 仕事とプライベートは別
- • 年齢に関係なく対等
コミュニケーションスタイル
日本
間接的なコミュニケーション。「空気を読む」文化があり、 はっきりと反対意見を言うことは少ない。和を重視し、全員の合意を大切にする。
オランダ
直接的なコミュニケーション。意見の違いを恐れずに発言し、 建設的な議論を通じて最適解を見つける。個人の意見が尊重される。
会議文化の違い
会議の進め方
日本の会議
- • 長時間になりがち(2-3時間も)
- • 事前の根回しが重要
- • 全員の合意を目指す
- • 上司が最後に発言
- • 反対意見は控えめに
- • 議事録は詳細に記録
オランダの会議
- • 効率的(1時間以内が基本)
- • アジェンダに沿って進行
- • 積極的な議論を歓迎
- • 誰でも自由に発言
- • 建設的な批判も重要
- • アクションアイテムを明確化
「No」と言う文化
オランダ人は理由があれば、上司に対してもはっきりと「No」と言います。これは失礼ではなく、 むしろ誠実さと見なされます。日本人にとっては最初は驚きかもしれませんが、 お互いの本音を言い合える関係が、より良い結果を生み出します。
ドレスコードと職場環境
服装の違い
日本
- スーツが基本(特に大企業)
- 髪色や髪型の規定がある場合も
- 清潔感と統一感を重視
- 季節感を大切にする
オランダ
- カジュアルな服装が一般的
- 個性を表現することを歓迎
- 機能性を重視
- 自転車通勤を考慮した服装
自転車通勤文化
オランダでは多くの人が自転車で通勤します。CEOでも自転車で通勤することは珍しくありません。 このため、職場には着替えやシャワー設備があることも多く、動きやすい服装が好まれます。
- 雨具は必需品
- 着替え用のロッカーが完備
- 環境意識の高さの表れ
- 健康維持にも繋がる
パフォーマンス評価と昇進
日本の評価制度
- • 協調性・チームワークを重視
- • プロセスも評価対象
- • 長期的な視点での評価
- • 年功序列の要素が残る
- • 360度評価の導入も増加
オランダの評価制度
- • 結果と能力を重視
- • 明確な目標設定とフィードバック
- • 短期的な成果も評価
- • 完全な能力主義
- • 定期的な1on1ミーティング
キャリア開発
オランダでは自分のキャリアは自分で作るという考えが強く、転職も一般的です。 スキルアップのための研修や資格取得に対する支援も充実しており、 会社も従業員の成長を積極的にサポートします。
病気休暇とメンタルヘルス
日本:がんばる文化
「少しの風邪では休まない」「迷惑をかけられない」という考えが根強く、 体調が悪くても出勤してしまう人が多いのが現状です。
- 病気でも出勤する人が多い
- メンタルヘルスへの理解が不足
- 有給を使っての病気休暇
- 長時間労働によるストレス
オランダ:健康第一
病気の時は休むのが当たり前で、無理をして出勤することは逆に周りに迷惑をかけると考えられています。 メンタルヘルスも身体の健康と同じように重視されます。
- 病気休暇は有給とは別枠
- 最大2年間の病気休暇が可能
- 給与の70%以上が保障される
- 復職支援プログラムが充実
メンタルヘルスサポート
オランダの多くの企業では、従業員のメンタルヘルスをサポートするため、 カウンセリングサービスやストレス管理プログラムを提供しています。 「燃え尽き症候群(Burnout)」も正式な病気として認識され、適切な治療とサポートが受けられます。
日本人の体験談:文化ショックと適応
よくある文化ショック
1. 定時退社への戸惑い
「17:00になると本当にみんな帰ってしまう!最初は申し訳ない気持ちになりました。」
2. 直接的なフィードバック
「上司に『この案は良くない』とはっきり言われてショック。でも理由も教えてくれて、改善につながりました。」
3. 休暇への罪悪感
「3週間の夏季休暇を取ることに最初は抵抗がありましたが、今では当たり前になりました。」
適応のコツ
- • 「NO」を言うことを恐れない
- • 自分の意見をはっきりと伝える
- • プライベートの時間を大切にする
- • 効率性を重視する働き方を身につける
- • 病気の時は無理をしない
- • 休暇を積極的に取る
まとめ:新しい働き方への挑戦
オランダの職場文化は、日本人にとって最初は戸惑うことも多いでしょう。しかし、一度慣れてしまうと、 その効率性と人間性を重視した働き方の素晴らしさを実感できるはずです。
重要なのは、「どちらが正しい」ということではなく、異なる文化を理解し、 自分にとって最適な働き方を見つけることです。オランダでの経験は、 あなたのキャリアに新しい視点と価値観をもたらしてくれるでしょう。
ワークライフバランスを重視しながらも、しっかりと結果を出すオランダの働き方。 新しい挑戦として、ぜひ体験してみてください。

Japan Deskディレクターからのメッセージ
「私自身、日本での長時間労働に疲れてオランダに移住しました。最初は文化の違いに戸惑いましたが、 今では毎日17:00に帰宅して家族と過ごす時間を大切にできています。働き方を変えることで、 人生の質が大きく向上しました。不安もあると思いますが、新しい働き方にチャレンジしてみてください。」
- 天野たけし(Japan Deskディレクター)