オランダへの移住を検討する際、最も気になるのが「実際にどのくらいの収入が得られるのか」ということではないでしょうか。特に家族でオランダに移住する場合、夫婦の収入を合わせて生活費をまかなうことが一般的です。20年以上オランダで生活している経験から、現実的な給与水準と家計事情をお伝えします。
オランダの基本的な給与水準
2025年の最新データ
最低賃金
- 21歳以上:€13.68/時間(2025年)
- 月額(フルタイム):約€2,400
- 年額:約€28,800
平均給与
- 全体平均:€38,000/年
- 大卒初任給:€35,000-45,000/年
- 経験者(5-10年):€45,000-65,000/年
注意:オランダでは多くの人がパートタイム(週32時間以下)で働くため、 年収だけでなく時間あたりの給与を確認することが重要です。
共働き夫婦の典型的な収入パターン
パターン1:フルタイム + パートタイム(最も一般的)
夫(フルタイム・40時間/週)
- 年収:€50,000
- 手取り月額:約€3,100
- 職種:IT・エンジニア系
妻(パートタイム・24時間/週)
- 年収:€24,000
- 手取り月額:約€1,700
- 職種:教育・サービス系
世帯合計
- 世帯年収:€74,000
- 世帯手取り月額:約€4,800
- 子供手当(2人):月€450
- 実質月収:約€5,250
パターン2:両方フルタイム(高収入世帯)
夫(フルタイム・40時間/週)
- 年収:€65,000
- 手取り月額:約€3,700
- 職種:管理職・専門職
妻(フルタイム・40時間/週)
- 年収:€55,000
- 手取り月額:約€3,200
- 職種:マーケティング・金融
世帯合計
- 世帯年収:€120,000
- 世帯手取り月額:約€6,900
- 子供手当(2人):月€450
- 実質月収:約€7,350
パターン3:移住初期・スタートアップ
夫(個人事業主)
- 年収:€35,000
- 手取り月額:約€2,400
- 職種:フリーランス・コンサル
妻(パートタイム)
- 年収:€20,000
- 手取り月額:約€1,450
- 職種:リテール・サービス
世帯合計
- 世帯年収:€55,000
- 世帯手取り月額:約€3,850
- 子供手当(2人):月€450
- 実質月収:約€4,300
オランダの税制と社会保障制度
所得税の仕組み
所得税率(2025年)
- €0 - €38,441:36.93%
- €38,441以上:49.50%
税額控除
- 基礎控除:€3,362
- 労働税額控除:最大€4,260
- 追加控除(各種条件あり)
社会保障費
オランダでは所得税と一緒に社会保障費が天引きされます。これには以下が含まれます:
含まれるもの
- 老齢年金(AOW)
- 遺族年金(Anw)
- 医療保険(WLZ)
- 失業保険(WW)
別途必要
- 基本医療保険:€135/月
- 追加医療保険:€20-50/月
- 歯科保険:€15-30/月
手当・補助金制度
児童手当(Kinderbijslag)
- 0-5歳:€255.43/月
- 6-11歳:€309.58/月
- 12-17歳:€363.74/月
- 18歳まで自動的に支給
住宅手当(Huurtoeslag)
- 収入により最大€350/月
- 家賃上限:€879/月
- 世帯収入により減額
- 持ち家の場合は対象外
医療費手当(Zorgtoeslag)
基本医療保険料の負担を軽減する手当。収入に応じて月€120まで支給されます。
- 単身者:年収€31,998まで
- 夫婦:合算年収€40,194まで
- 子供がいる場合は上限が上がる
実際の生活費との比較
4人家族(夫婦+子供2人)の月間生活費例
必要生活費
収入例(パターン1)
生活費のポイント
- 家賃:アムステルダム中心部は高額。郊外や他都市なら€1,200-1,500も可能
- 食費:外食は高いが、食材は日本とほぼ同程度
- 交通費:自転車があれば大幅に節約可能
- 教育費:公立学校は18歳まで無料
- 税制優遇:各種手当により実質負担は軽減される
地域別の給与水準
アムステルダム
家賃も最高額
ロッテルダム・ハーグ
生活費はやや安い
地方都市
生活費は大幅安
地域選択のポイント
オランダは小さな国なので、どこに住んでも主要都市まで1-2時間でアクセス可能です。 給与と生活費のバランスを考えて最適な地域を選びましょう。
- アムステルダム:国際企業多数、高給与、高家賃
- ロッテルダム:港湾都市、物流・貿易業が盛ん
- ユトレヒト:中央立地、バランスの良い生活
- アイントホーフェン:技術都市、エンジニア求人多数
日本との収入・生活費比較
日本(東京)
- • 世帯平均年収:約800万円
- • 手取り月額:約50万円
- • 家賃(3LDK):25万円
- • 食費:8万円
- • 教育費:5万円/月
- • 社会保険料:15%程度
オランダ(アムステルダム)
- • 世帯平均年収:€74,000(約1,300万円)
- • 手取り月額:€5,580(約93万円)
- • 家賃(3LDK):€1,800(約30万円)
- • 食費:€600(約10万円)
- • 教育費:€0(無料)
- • 社会保険料:込みで37-50%
総合的な比較結果
オランダの利点
- 教育費が無料(大学まで)
- 医療費が安い(基本保険でカバー)
- 各種手当が充実
- ワークライフバランスが良い
- 有給休暇を確実に取得できる
注意点
- 税率が高い(37-50%)
- 外食費が高額
- アムステルダムの家賃は高い
- 冬季の光熱費が高い
- 言語の壁(初期)
まとめ:現実的な生活水準
オランダでの共働き夫婦の収入は、税率は高いものの、各種手当や無料教育制度により、 実質的な生活水準は日本と同等以上を維持できます。特に子育て世代にとっては、 経済的な負担が少なく、充実した社会保障制度の恩恵を受けることができます。
重要なのは、収入額だけでなく、ワークライフバランス、教育機会、将来の安定性を総合的に判断することです。 オランダは「お金」だけでない豊かな生活を実現できる国と言えるでしょう。
移住を検討される際は、ご自身の職種・経験・家族構成に合わせて、 具体的な収入試算をすることをお勧めします。

Japan Deskディレクターからのメッセージ
「給与水準だけ見ると日本と大きく変わらないように感じるかもしれませんが、 実際に住んでみると生活の質の違いを実感できます。18歳まで教育費無料、 充実した社会保障、そして何より家族と過ごす時間が増えることの価値は計り知れません。 お金では測れない豊かさがオランダにはあります。」
- 天野たけし(Japan Deskディレクター)